仮想通貨のトラベルルールって複雑でよくわからないですよね。今回はトラベルルールについて、できるだけわかり易く解説した上でトレーダーに与える影響や回避方法などをまとめました。
国内の仮想通貨トレーダーにとっては非常に影響の大きい規制となりますので、一緒に勉強していきましょう!
トラベルルールはマネーロンダリングなどの犯罪資金を追跡するための送金に関する規制です!取引所の組み合わせによっては送金ができなくなるよ!
取引所間の送金可能関係を手っ取り早く知りたい方は以下の「トラベルルールまとめ図」をチェックするだけでもOKです!
より詳しくトラベルルールについて知りたい方は読み進めてくださいね!
トラベルルールとは
トラベルルール(Travel Rule)」は、暗号資産(仮想通貨)の送金に関する規制で、暗号資産を使った送金が行われる場合、取引所などの暗号資産交換事業者が送金者と受金者の名前やアドレス、取引内容などの情報を送金とともに共有し、必要に応じて当局へ提供できるようにする仕組みです。これにより、資金洗浄やテロ資金供与などの不正行為を防ぐことが目的です。
参考資料:
暗号資産・電子決済手段の移転に係る通知義務(トラベルルール)【金融庁】
トラベルルールの対象法域について【金融庁】
トラベルルール導入について【日本暗号資産取引業協会】
トラベルルールの目的
トラベルルールにより暗号資産の送受信者の情報を把握することで不正利用された暗号資産の追跡ができる可能性が高まります。
テロリストなどの犯罪資金供与やマネーロンダリング対策のために仮想通貨を安全に使用するために必要不可欠の規制なんですね。
トラベルルール通知対象国
トラベルルールはすべての取引所を対象としたものではなく、通知対象の国にしていされている国を所在地としている取引所のみに適用されます。
執筆時点での通知対象国は以下の表のとおりです。
つまり、この表に含まれない国の取引所はトラベルルールの影響を受けないという事になります。日本人が良く使うBybitなどは対象外となります。また、通知対象国は今後追加される可能性があります。
トラベルルールソリューション技術について
トラベルルールに対応するため各取引所はTRUSTやSygnaなどのトラベルルールソリューション技術のどれかを採用しています。(BITPOINTなど両方の技術に対応した取引所もある)
ここで注意してほしいのは各技術間には互換性が無いため、取引所の組み合わせによっては送金ができないという事です。例えばTRUSTを採用しているコインチェックはSygnaを採用しているbitbankへ送金することはできません。
各主要取引所の対応技術などは後述します。
トラベルルールにより送金ができないケースを解説
前述したとおりトラベルルールにより送金ができないケースがあるので、これについてもう少し詳しく解説します。
異なるトラベルルール技術間での送金不可
トラベルルールについてトレーダーが最も知っておくべきことは、TRUSTとSygna間での送金はできないという事です。
国内取引所では主にTRUSTとSygnaが採用されており、異なるソリューション技術間で送金するにはトラベルルール対象外の取引所や個人ウォレットを介する必要があります。
主要な取引所の対応状況を以下にまとめましたので、自分がよく使用している取引所がどのソリューション技術を採用しているのかチェックしておきましょう!
「TRUST」対応の主要取引所一覧
TRUSTを採用しているトラベルルール対象の主要取引所は以下の通りです
- コインチェック
- bitFlyer
- BITPOINT
- Binance.US
- BitMEX
- coinbase
- Kraken
- Phemex
- など
「Sygna」対応の主要取引所一覧
Sygnaを採用しているトラベルルール対象の主要取引所は以下の通りです
- GMOコイン
- BITPOINT
- DMM
- bitbank
- SBI VC
- 楽天ウォレット
- okcoin
- zaif
- MEXC Global
- など
「Sygna」と「TRUST」以外
「Sygna」と「TRUST」以外にもソリューション技術があります。これらの取引所はどの国内取引所にも送金できないので現状ではかなり使いにくい取引所と言わざるを得ません。
- BinanceJapan:GTR
対象外の主要海外取引所
これらの取引所は個人ウォレットと同様にトラベルルールの影響を受けません。
- Bybit
- Bitget
- Kucoin
- Gate.io
- など
主要取引所のトラベルルールまとめ一覧表
主要取引所の関係図です。自分のよく使う取引所の関係をチェックしておきましょう。
トラベルルールがトレーダーに与える影響・デメリット
トラベルルールによって我々個人投資家・トレーダーに同様な影響やデメリットがあるのでしょうか。
送金時に受け取り側の情報を提示する必要がある
トラベルルールにより、送金時にはアドレス以外にも送付先の取引所名などの情報を入力をする必要があり、これが手間となります。とはいっても一度入力しホワイトリストに登録しておけばそれ以降の入力を省ける取引所などもあるので、そこまでの手間とはなりませんので安心してください。
国内取引所間で送金できない場合がある
前述したように、対応するトラベルルール技術によっては送金ができない場合があります。特に国内取引所では大手のコインチェックとbitFlyerはTRUST対応なので、GMOやbitbankとは送金できません。
複数の取引所を使い分けるトレーダーは各取引所の対応関係を把握しておかないといけません。
資金移動に時間がかかる場合がある
取引所によってはトラベルルールの情報の確認に時間がかかり送金や入金に時間がかかる場合があります。入金反映に1日かかってしまうケースもあるなど、この点は高速な送金が可能という仮想通貨のメリットが失われてしまいトレーダーにとっては非常に大きなデメリットとなります。
中にはそれでも反映が迅速が取引所もあるので、テスト送金などを行い各取引所の特徴を把握しておくのも良いでしょう。
トラベルルールの回避方法
トラベルルールを回避する方法を解説します。
トラベルルール通知対象国外の海外取引所を活用する
トラベルルールは通知対象国以外の取引所では適用されないので、そういった海外取引所へ国内から送金しその取引所から別の取引所へ送金しましょう。
日本人が使える取引所でいうとBybitやBitgetが有名です。
メタマスクなどの個人ウォレットへ送金する
メタマスクやPhantomなどの個人ウォレットもトラベルルール対象外となります。一旦個人ウォレットを挟むことでトラベルルールを回避して送金する事ができます。
トラベルルール回避のリスクについて
冒頭でも書いた通り、トラベルルールは仮想通貨でのマネーロンダリングや犯罪資金供与へ対策のための重要な規制です。公的機関が資金の追跡が可能という事は、マネーロンダリングの疑いがかかってもトラベルルール内で活動していれば潔白を証明できるという事です。
トラベルルールを回避する際は資金洗浄などの疑いがかけられて口座が凍結してしまうリスクがあるという事を念頭に置いておきましょう。
また、当ブログはトラベルルールの回避を推奨するものではないので対象国外への送金は自己責任で行いましょう。
トラベルルールに関するQ&A
Q1:トラベルルールはいつから?
トラベルルールは2023年6月1日の改正犯収法により国内で義務付けられました。
Q2:ビットコインはトラベルルール対象?
中にはトラベルルールに対応しない仮想通貨もありますが、ビットコインやイーサリアムももちろんトラベルルールの対象となります。送金可能な取引所間での送金を行いましょう。
Q3:個人ウォレットには送金できる?
前述した通りメタマスクなどの個人ウォレットはトラベルルールの対象外なので、通常通り送金ができます。ただし、マネーロンダリングや違法な資金移動が疑われる場合は、個人ウォレットへの送金にも制限がかかる可能性がありますので注意が必要です。
Q4:海外取引所には送金できる?
通知対象国以外の国を所在地としている海外取引所への送金は可能ですが、通知対象国への送金は不可です。詳しくはトラベルルールの対象法域について【金融庁】 を参照してください。
Q5:トラベルルールに違反するとどうなりますか?
トラベルルールを無視したり、虚偽の情報を提供した場合、送金がキャンセルされるだけでなく、罰金やアカウントの凍結といったペナルティが科される可能性があります。取引所の規約や各国の法律に従い、正確な情報を提供することが重要です。
トラベルルールまとめ
以上がトラベルルールの概要になります。少し複雑ですが以下の事を理解しておけば特に問題はないので再度確認しておきましょう!
- トラベルルールは仮想通貨の送金に関する規制
- 主に「Sygna」と「TRUST」のトラベルルールソリューション技術がある
- 異なるソリューション技術間での送金はできない
- 通知対象国以外の取引所への送金は可能(Bybitなど)
- 個人ウォレットへの送金は可能
- トラベルルール回避は自己責任で行う
トラベルルールは少し面倒だけど、より良い世界を作るための大事なルールです!
参考資料:
暗号資産・電子決済手段の移転に係る通知義務(トラベルルール)【金融庁】
トラベルルールの対象法域について【金融庁】
トラベルルール導入について【日本暗号資産取引業協会】